林 智子 ≪tear mirror-jewel≫ 2011年(寒天、砂糖、水飴、涙)
第2回目は林 智子さんの作品。
林さんの作品に欠かせないのは「涙」。
「tear mirror-jewel」という作品群は
林さん自信の呼びかけに応じて、一般の方々が「落とした涙」にまつわるエピソードと共にその「涙」そのものを小さな瓶に詰めて作家に送り、
作家がそこからインスパイアされた宝石を寒天、砂糖、水飴で作ったものがそれぞれに展示されているというもの。
これは、提供された涙への
作家の恩返しなのであると僕は「勝手解釈」をする。
作家は多分、私小説に出会った時のような同情やとまどいをもって
それらのエピソードを読んだであろう(と推測する)
正直に言えば、他人の“ささやかな”不幸や“ちっちゃい”感動は
(ここでいう不幸や感動は解像度を大きくしたもの、あるいは倍率を上げたもの)というのは
ごく自然にそそられるものだ。
その結果の涙という“儚い成分でできた”一粒の真珠はとても魅力的だ。
林さんのプロフィールにある「人と人との距離感」というのは
言葉にならないほどの、いや言葉にできないほどの些少な感情に揺り動かされて、ほろりと落ちる涙、
その涙を流したという事実が本人が封印したいことであれ、なかれ、
第3者の心をそよっと動かすものであるということだ。
と、同時にあくびをしても涙はこぼれる。
ただ、救いはテレビでさえ、画面の中で切なく泣いている人を見た時、
訳も無くもらい泣きしてしまうほどに僕たちは情緒的なことだ。
4つある作品のひとつにこんな一文が添えられている。
とてもシンプルだけど
誰にでも伝わる強い共感度を持っていると思う。
そして思わず頬も緩む。
誕生の瞬間に立ち会えたかのような共感。
そして、もう一つ…
生きているからこそ、涙も流せる、と考えたら人生、少しは救われるような気がする。
涙の数だけ人生が…なんて歌の文句でもあるまいが
その結晶化された琥珀を見ていると
本物の宝石もその由来は実は涙なのではないか、
そんな気もする。
文責:den 編集:京都で遊ぼうART
→ケーキと権威...「sweet memory―おとぎ話の王子でも 」展(1)