うまくいかないことを受容できるようになった時から、さらなる染色という「しごと」に向き合える
と言っていた大西さん。
前に版画作家が「これなら描いたらいいのに。版画でする必要性は?」と言われたと笑っていたのを思い出します。
大西さんも同様の経験があるそうですが「なぜその方法なのか」と自己に問うということは作家さんなら誰しもあることでしょう。
しかし、その過程があって初めて作品は成立(完結ではなく)するわけで、染色でなければならない理由は、12年以上も麻布にろうけつ染めという表現方法をされてきた大西さんが一番よくご存知のはずです。
それは愛犬を連れて行く近所の川べり。
揺れるような川風に当たる瞬間に自分自身が浄化されるような感覚を染めた作品によく表されています。
二枚を継いだ形は染色ですることの難しさへの果敢な挑戦とも言えますし、最後まで仕上がりが想像できない染めの怖さがこれらの優しい色合いの作品の奥に潜んでいるわけです。