素人がギャラリーを巡りながら作家とお話しさせていただき「なにぶん、一般人ですが好きで現代美術のブログをアップしています」などと、どれだけ言っても、知らない情報が多過ぎて、もう記憶を司る海馬とやらは相当に傷んでもいますし、第一収拾、整理が全然できていません。
なもんで、気安くお声掛けさせていただき、名刺を交換しながら「ああ、よかった」と。これの繰り返しですね、いわば。
でも作家さんというのはそれほど語りません。出自もコンセプトも、もちろん経歴も。そこで帰って検索すると、なるほど、そういう人だったのね、といったことも多々ありまして、田中さんもそういったお一人です。
多摩美&院で学ばれた田中さんは現在は或る大学で服飾美術学科で教鞭をとられておられますが、何よりもテキスタイル一筋でこられた方のようで、国内外の出展も公募も数多くされています。
そして興味深いのはやはり舞台美術の企画・制作を多く手掛けてこられたという実績が、うれしい(かつ勝手な)憶測と重なってしまうケースがあります。
和紙の多面体オブジェの組み合わせなのですが、ひとつの作品の中に、或る秩序と内包された放射が共存し、なおかつ造形としては集合体であるにも関わらず、ひとつの大きなカタチを形成しています。
キューブ状に構成された「内への力の収束」が「門」としての意味合いに大きく関わってきます。門=GATEは異界への入り口でもあり、同時に結界との「しめし」のサインでもあります。
神社、寺、城、それぞれに門というものが厳然と「分つもの」としての象徴としてあり、かつ魔物から守るための予防線=防波堤として認知されてきたことは、日本古来よりディフェンシティブな役割を担ってきたのではないか、と穿って、シッタカぶるのですが…
…ともあれ田中さんの作品はそこにそういう設えを表したことで、勝手にくぐりながら観客は見上げたり、隙間を除いたりしながらささやかながらもインタラクティブな関係をつくります。
それはもしかしたら「参る・詣る」に近いかも知れません。
漠然とそこにある造形ではなくて、問いかけたり、投げかけたりするということの面白さを実感するファイバーアートでした。