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御釡師400年の仕事 大西清右衛門 茶の湯釡の世界|都ログ。VOL. 1

投稿:2014年1月15日

美術館「えき」KYOTOで開催中の「御釡師400年の仕事 大西清右衛門 茶の湯釡の世界へ。

茶道をはじめたいと思っていて何気なく訪ねた展覧会だったが、すっかり魅了されてしまった。
あくまでも何気なさを追求し、実用性という制限の中のストイックなデザイン。王道とも言える乙御前釜(おとごぜがま)*1から、植物や動物のモチーフを凝らした釜まで。「こっ、この釜は~!」と目を剥く「へうげもの」*2の主人公の心境が分かる気がした。

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初代 大西浄林 (1590 ~ 1663)「霰乙御前釜」 (あられおとごぜがま)
(大西清右衛門美術館サイトより)

茶の湯というと、私のような素人は、つい茶碗や茶筅などの身近な茶具に注目しがちだが、何はなくとも釜。茶の湯を催すことを「釜をかける」と表現することからも分かるように、釜がなければ始まらないのだ。

いずれは必ず錆びてしまう鉄という素材を、これほどの時間と手間をかけて加工する工芸は他国には見られないそうだ。あくまで何気なく見せるための趣向と試行錯誤の数々。細部にこだわる。あえて壊す。歪ませる。その「不完全」を完全ならしめるものは、それを見る人間の心という考え方だ。

だとしてもどこまでこだわり抜くのだろう、職人は、そして茶人達は!執着、執念にも似た、モノづくりへの思い。思わず「変態だろ~!」と心の中で叫んでいた。私にとっては、「変態」とは最高の褒め言葉のようなもの。既存の概念を打ち壊す。美のあり方から作りだし、正解が存在しない世界で最高を追い求める。道教の考え方が色濃いようだが、日本人だからこそここまで高められたのではないだろうか。オタクの原点をここに見たり。


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二代大西浄清 (1594 ~ 1682) 「筋釜」 (すじがま)
「へうげもの」のモデルにもなった戦国の数寄者、古田織部も好んだという筋釜。(大西清右衛門美術館サイトより)

粉茶の文化、つまり抹茶をお湯に溶いて飲む様式は宋の時代に起こったのだけど、蛮族の侵入により本国では途絶えてしまう。その粉茶の文化が完成を見るのは日本の安土桃山時代において。あの時代の環境と多彩な変化を見せる日本特有の気候、宗易をはじめとする茶人の「わび」の中に美を見出す感受性のすべてが揃ってこその完成。まったく日本人は幸運だ。

壊れても、継いで修理して使う。はたまた壊れた釜をさらに叩いて穴を空けて炉にする。何の説明も受けなければ、単にぶっ壊れた釜ですよ(笑)。そこに見ちゃう~!?美を!?驚くべき美術鑑賞の目。私たちには変態の血が流れている!喜ぶべき!

展覧会は美術館「えき」で1/15まで。ぜひ、足を運んでみてほしい。



*1. おとごぜは「おたふく」の意味で、そのまるっこいフォルムが特徴。
*2. 山田芳裕による歴史漫画作品。戦国時代、織田信長、豊臣秀吉に仕えた戦国武将・古田織部を主人公として描いた。


ちなみに、著者は来月から京都は釜座町(かまんざちょう)に住む予定である。そう、まさに平安初期からの由緒ある鋳物の町であり、この大西家が現在も釜の制作を行っている場所である。しかし、家を決めたのはお茶や釜に魅力を感じはじめる前であった。釜に呼ばれるように引っ越していく私。三条釜座の女になる日を夢想しながら毎日を送っています。


大西清右衛門美術館



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