昨秋、南禅寺から永観堂に紅葉を訪ねました。大変な人出で、人に疲れ緊急避難したのが相国寺。紅葉ではあまり有名ではないものの、相国寺にも紅葉はあります。
[昨秋の相国寺の紅葉]
相国寺といえば、狩野光信によって法堂の天井に描かれた鳴き龍が有名ですが、この龍、八方睨みの龍でもあります。
法堂に入ると係りの方が天井の龍の説明をしてくれます。周囲の人を眺めると、ハッキリと龍を確認できていない方が多いようです。私は、龍を見るとき、角を探すことにしています。龍の角は「せんとくん」のようなヘラジカの角ではなく、日本で見られる鹿の角です。彩色は黄色系なので目立っています。角さえ認識できれば、直ぐに顔全体を把握できます。法堂の入り口付近で見る龍は、角を下にして仰向けに寝ています。奥に進むにつれ、龍は起き始め、やがて天空から見下ろす龍となります。
龍の伝来は弥生時代、青銅鏡の裏面の文様として伝わったとされ、龍の伝播は静岡までとされています。
龍の創造は諸説あるようですが、その中の一説にシンボル説があります。昔、人々は小さな部族単位で生活していた。各部族はシンボルを持っており、部族同士の離合集散の過程の中で龍が創造されたとする説です。例えば、蛇をシンボルとする部族と鹿をシンボルとする部族が合体し、蛇に鹿の角を持ったシンボルが生まれた。更に、魚をシンボルとする部族と合体し、蛇の胴体に鱗が付き…、このようなことを繰り返す中で、やがて龍が生まれたとする説です。
相国寺は、鹿苑寺、慈照寺(通称、金閣寺、銀閣寺)を山外塔頭として擁する臨済宗相国寺派の大本山。承天閣美術館は、相国寺派各塔頭の寺宝を収蔵しています。収蔵品の中には、国宝5点、重要文化財143点が含まれており、その時々の企画によって寺宝が展示されています。写真は、昨秋の承天閣美術館入り口です。
最も感銘を受けたのが、勝川春章「桜下花魁道中図」。墨彩色で描かれたこの絵は、艶やかさよりもむしろ寂しさを伴って心に染入ってきます。他に目に付いたのが、北尾重政「久米仙人と洗濯美人」。版画よりも肉筆画に感銘を受けてきました。版画では、葛飾北斎、富嶽三十六景の校合摺は、線が生き生きとしており素晴らしいものでした。東洲斎写楽、鳥居清長、喜多川歌麿、鈴木春信、魚屋北渓等有名所の版画が展示されていました。版画の世界らしく、吉原を初めとする当時の風俗が垣間見られ、浮世絵ならではの世界を楽しんできました。
文責:HIPPO 編集:京都で遊ぼうART
比良や霊仙山には度々行っている山屋です。 京都国立博物館はじめ、美術館・博物館で作品を鑑賞した後、静かな佇まいの場所を選んで散策することが楽しみです。 美味しいものや、京都らしいものを探し求めながら…。 クラシック音楽のコンサートでも京都にお邪魔しています。