京都国立近代美術館2019年第一の企画展である、「世紀末ウィーンのグラフィック デザインそして生活の刷新に向けて」が、 1月13日から開催されています。
同企画展では2015年に同館が一括購入した、「世紀末ウィーンのグラフィックコレクション」を多く見ることができます。グスタフ・クリムトを中心として結成されたウィーン分離派は、旧態然とした芸術、デザインさらにはそれを取り巻く環境を刷新し、新たなオーストリア芸術の昇華を目指し、多くの芸術作品を生み出しています。
さて展示会場に入ったら、まず二対の像が目に入りますが、それだけに目を奪われず、像の間の、はるか先も眺めて見てください。自身がウィーンにきているような錯覚をおぼえる仕掛けがされています。そこは写真撮影可能な場所でもあるので、会場を一周した後に撮影することをお勧めします。
展示はデザイン性に優れた挿画や原画、版画作品の紹介に始まり、分離派を牽引したクリムトやシーレの貴重なコレクション、そして何より新しい芸術の創造を目指した彼らの試行錯誤が、どの作品の中にも見ることができます。彼らは芸術を至高のものとしながらも、人々の生活とより密接な関わりを持つ応用的なものだとも考え、絵本やポスター、新聞などにもグラフィックを通して関わっており、身近なものを芸術へ昇華させた努力も感じることができるはずです。
彼らのスローガンでもある「時代には芸術を、芸術にはその自由を」。それは当時の社会に浸透していきますが、今の私たちの時代、生活にはどのような芸術が必要なのでしょう。そんなことを考えられる興味深い展示でしたので、是非のんびり見れる朝方などに足を運んで見てください。