室町時代には五山の一つに数えられ、今では紅葉の名所として、また方丈庭園の見事さで知られる名刹である、東福寺。
今回は喧騒をさけ、新年早々の表情を紹介したい。
地下鉄の東福寺駅を降りて、右手のいづ松の方に進んでいくと、交番の手前を左に入ることができる。
ここから道なりに進めば、ほどなく木造の橋が現 れてくる。
この橋は臥雲橋といい、境内にも流れる小川の上にかかっている。
この時期は紅葉の葉が枯れ落ちて一面の地面が茶褐色に覆われ、枝に僅かに残る紅葉の葉に、常緑樹の緑が何とも侘しさを演出している。
ふと柱に目をやると、程よく朽ちた表情にも風情がある。
決して人工的に作ろうとして出来るようなものではなく、多くの往来を支え、風雨に時には雪にさらされながらも、その橋を支え続けてきた逞しさが宿っていることに気付かされる。
橋を越えて少し行くと、左手の門から境内にはいることができる。
山門をくぐるとすぐに右手に禅堂正面に本堂をとらえる。
本堂の天井にある龍の絵、 そしてもう一つの五山である万寿寺から移動された立像を拝見することができるが、今回は左手に進み通天橋から開山堂を目指すことにする。
通天橋は、臥雲橋 と並んで小川にかかる橋であるけれど、こちらは境内の中にある。
左右に眼下に広がるの茶褐色の絨毯とやはり松の緑が美しい。
ゆっくりと通天橋から流れる景色を楽しみながら、開山堂をめざす。
開山堂への門をくぐるとすぐに開山堂を正面に見て左手に枯山水、右手に築山風の庭園が目に飛び込んでくる。
これは一つに見立てて楽しむこともで き、また個々に楽しむこともできる。
その間に通された道でさえ一つの庭園を造る要素であるように思える。
中から、そして普門院側からとゆっくりと繰り返し 表情を楽しむことができる。
この普門院の立て板の絵にもぜひ注目していただきたい。
板にそのまま描かれた絵は一つは鹿、反対側には紅葉と思しき絵が描かれ ている。
この板絵が一つの院である普門院の廊下を引き立てている。
決っして派手なものではないのですが、晴れた冬の午後にでも足を運んでみてください。