ここ数年のフェルメールブームもあって混むのは必至なので、京都国立近代美術館の「青木繁展」後期と一緒に、始まってすぐに出かけました。
17世紀オランダがスペインから独立し、アムステルダムは商業の中心となり、市民が富を蓄え、住居に絵を飾るようになりました。
それまでの教会や王の城、貴族の室内を飾った絵画とは自ずとその大きさも要求される題材も異なってきたのであろう。
市民の日常を描いた作品には、ピューリタン精神(オランダではゴイセン)からか、オランダの諺や格言、道徳的メッセージを、教訓を示唆するものであり、絵に描かれた小物一つも意味を持たせているらしい ← これを考えたりするのが好きな人にはいいが、私には描かれた作品それ自体と向き合いたいので、結構面倒、厄介である。
楽しいのは、当時のオランダの室内の様子が伺える事である。
綺麗に片付けられた室内は、モザイク模様の床、どっしりとしたカーテン、テーブルに置かれた食器類、壁に掛る絵や地図などなど興味深い。
「家族の絆、家族の空間」と題された第二の展示場にある、アンドリュース・ファン・ボホーフェンの『テーブルに集うファン・ボホーフェンの家族』の作品は印象的です。
顔顔顔、家族だから似ているのかも、アンソールの絵を思い出したのは私だけでしょうか?
フェルメールの手紙にまつわる3作品は最後に並べて展示されています。
フェルメールは、自分のアトリエで緻密な空間構成を練りながら、左の窓から差し込む光の効果を考えた事でしょう。
『手紙を書く女』は、1999年に東京都美術館で観た作品との再会です。
当時は広い額にばかり目が行ってしまいました。(・・;)
この黄色の上着はフェルメールの他の作品にもしばしば登場しますね。暗いバックに白の毛の縁取りのあるレモン色のモーニングコートが映え、こちらを見る女性の顔に左の窓からの光が当たっています。
今回のポスターにもなっている『手紙を読む青衣の女』は、修復後初めての公開で、静かな時間の流れる作品です。
この作品の女性が着ている上着はたっぷりとして、淡い青が涼しげで、窓からの光で手紙をよんでいます。フェルメールブルーとも呼ばれるラピスラズリーを原料とする高価なウルトラマリンが美しい。
『手紙を書く女と召使い』は、手紙を書くことに没頭する女と、それを窓の外に目をやりながら待つ召使の居る緊張感漂う作品です。
召使の襟元と袖口の白、女主人の白い上着と床のモザイク模様の白が窓からの光に反射して眩しく、効果的です。
この三作品それぞれ背後の壁に架けられたヴィオラ・ダ・ガンバを描いた「静物画」、ネーデルラントの地図、「モーセ発見」の油絵は、それと目を凝らさねば分りませんし、解説がなければその意味するところは現在の一般鑑賞者には分りがたいものです。
それを理解したうえで、もう一度見直してみるのもいいかもしれません。
文責:licoluise 編集:京都で遊ぼうART
映画:『真珠の耳飾りの少女』(ピーター・ウェーバー監督/スカーレット・ヨハンソン/2002)
書籍:朽木ゆり子著 『フェルメール全点踏破の旅』
ブログ:フェルメール大好きアートブロガーTAKさん『BLUE HEAVEN 本館』
「フェルメールからのラブレター展」コミュニケーション:17世紀オランダ絵画から読み解く人々のメッセージ」(6/25-10/16)
→ 【レポート】「フェルメールからのラブレター展」(京都市美術館)に行ってきました!(内覧会レポート)