アメリカ、ニューオリンズの眼科医・ギッター博士と妻・イエレン女史の40年近い日本美術コレクションの「里帰り」と銘打った江戸絵画を中心とした展示です。
1.若冲と奇想の画家たち 2.琳派の多彩 3. 白隠と禅の書画 4. 自然との親しみ
5. 理想の山水 6. 楽しげな人生 の6つのセクションに分けて構成され展開していきます。
導入は、今江戸絵画では今一番の注目、京都にも縁のある若冲です。出展数も多かったですね。
2点の「寒山拾得図」は、私達にお馴染の”寒山拾得”ではなく、簡略化された線で表現され、その形態もとてもユニークなのに寒山拾得と分かってしまうのです。
ポスターやチラシにもなっている「達磨図」、洞窟で何年も壁と向き合う達磨を描いた雪舟の峻厳な作品とはことなり、何だかキョトンとした表情はあの円らな瞳ですね。「画龍点睛」とは反対に、最後に瞳を書き加えたら達磨がこんな表情になるのは、若冲の計算でしょうか?
画面をはみださんばかりの正面向きの「白象図」、簡潔な太い輪郭線と地は濃い墨で現してしまうとは、お見事。
どこかで見たことのある白象は「樹花鳥獣図屏風」の真ん中にいましたね。
注目株から言えば二番手の蘆雪は、彼が得意とする外隈の表現にありです。
師匠の応挙も出展されています。
奇想(私はこの様に括ることを好みませんが)の画家としては若冲の上をいく蕭白は、やはり「寒山拾得図」、彼はこのテーマが得意なんじゃかないかと私は思ってしまいます。
一双の屏風は、右隻、左隻が前後期に一隻ずつ分けて展示されていますが、徴翁文徳の「龍虎図」や「洛中洛外図」は二隻ともに並べて観たいものです。(スペースの問題もありますからねぇ)
琳派の作品は、宗達の「鴨に菖蒲図」から神坂雪佳まで展示されています。
断トツでいいのは、抱一の「朝陽に四季草花図」軸3幅です。春と夏を分け、秋と冬を分ける流水紋が溜め息ものの美しさです。抱一は本当に品が良いですね。
来春の細見美術館への巡回が待たれます。
ギッターさんは禅画をコレクションの中核に据えられていたそうで、今回の展覧会もメインは禅画かもしれません。私自身禅画を観るよい機会を頂きました。
禅と聴けば厳しいイメージなのに、今回お集まりの禅画僧のみなさんユニーク、なんともおおらかな作品の多い事でしょう。
白隠の「達磨図」は有名ですが、「観音図」はしとりしています。
仙厓さんの「欠伸布袋図」たら・・・私のお気に入りの中原南天棒の「托鉢僧行列図」そのタイトル通りですが、托鉢僧が連なっているのか、一人の托鉢僧の姿なのか?ちょっと皮肉も込めて、ともにひょいひょいと描いたような感じです。
文人画では、大雅、蕪村、文晁の作品も充実です。「東雲篩雪図」しか知らなかった浦上玉堂の他の作品を観ることが出来きたのはラッキーでした。
最後のセクションは美人画で〆です。
ギッターさんは軍医として日本に滞在なさっていたので、日本語も習得できたはずですが、敢えて日本語を覚えず、作品一つ一つと対峙することによって自分の好きなものを集められたのでしょう。ギッターさんといいプライスさんといいアメリカにはとんでもない日本美術のコレクターがいらっしゃるものですね。
文化博物館は建物もいいですね。2階総合展示の「陽明文庫の名宝」では、来春の京博での企画展示に先立つ、お宝ものの展示ありです、ここものぞかれてはどうでしょう。