誰か仕掛人がいるのか?
日本画ブーム、美術番組も増えましたね。
昨年は東博で写楽、相国寺で『ハンブルク浮世絵コレクション展』、大ブームとなってしまった歌川国芳、 美術館「えき」KYOTOでの「北斎の富士」展と浮世絵ブームでもあります。
が、北斎、広重となれば、教科書でもお馴染で、私たちが一番目にしてきた浮世絵でしょう。
(浮世絵のミカタについては、「京都で遊ぼう」さんが易しく解説されていますのでそちらを参照してください。
→【特集】 浮世絵のミカタ。-北斎展をもっと楽しむ-
今回の「北斎展」は北斎の作品がほぼ年代順に紹介されています。
北斎の代表作とも言える「富嶽三十六景」は、北斎が70を過ぎてからの作品と言うのには、驚きです。
(最近行った草間弥生展での草間の80を過ぎてからのパワーにも負けない!)
このシリーズに成功した北斎の精力的な創作活動が、その後の「諸国名橋奇覧」や「諸国瀧廻り」「琉球八景」などの摺物で、今回の展覧会でも紹介されています。
初期の北斎の作品を観ていると、何か物足りないと感じるのです。
そう、「色彩」です。
ドイツ・ベルリンで発見された顔料(プルシアン・ブルー)が中国経由で日本に輸入されるようになり、「ベロ藍」と呼ばれるこの青が北斎の作品に現れだすと、青が赤を引き立て、作品が引き締まり、色彩の調和のようなものが感じられ、我々がよく知っている北斎の作品となります。
上記「浮世絵のミカタ」には、「富嶽三十六景」表富士と裏富士のお話もあるのでチェックしてください。
北斎は、富士山を様々な角度から眺め、写生しながらも、浮世の暮らしぶりを作品に残しています。
広重が、音が聞こえるような浮世絵なら、北斎はやはりその構図の大胆さに目が奪われます。
代表的な「神奈川沖波裏」の迫力満点の浪の表現と小さな船にしがみつき波に翻弄される乗船者たち。
凄いですね、この作品を眼にした印象派の画家たちが驚いたのも頷けます。
日曜美術館の「北斎傑作10選」でしたか、実際に検証してみると波の先はあの通りの形状で、北斎の眼の確かさにも驚きです。
「諸国瀧廻り 相州大山ろうべんの瀧」(後期展示)天保3-4年頃
1957年ジェームス・A・ミッチェナー氏寄贈
撮影:ティム・シーゲルト ©Honolulu Academy of Arts
北斎は、水の表現がいいですね。
摺物では、私としては、「諸国瀧廻り」を押したい。
それぞれの瀧の持つ特徴が見事に表現され、落ちる水の勢いまでも伝わってきて、瀧がまるで生き物のようです。
ごーっと言う音も聞こえてきそうです。
諸国廻りを見た人は、きっと廻ってみたくなります。観光ガイドブックでしょうか。
浮世絵では、絵師の技量に目がいきますが、彫り師、摺り師の職人技も見落とせません。
貴重な北斎の肉筆画もお見逃しなく。
今回の展示は、前期後期ですべてが展示替えで、前期の半券を持っていけば割引になるそうです。
が、出来れば、3階は、美人画でなく、全部一度に展示して頂きたかったです。