国宝展もⅡ期となりました。この時期の一番のお目当てはあれですね。《大徳寺 龍光院 曜変天目》です。 Ⅰ期に続き、Ⅱ期も行ってきました。静嘉堂文庫や藤田美術館の「曜変天目」は目にしたことがあるが、龍光院さんの「曜変天目」を目にする機会がなかった。最初の記者発表では、龍光院の「曜変天目」はリストに入っていませんでしたが、最終的にはリストに!
まず、ここでおさらい。「国宝」って?
日曜美術館での「国宝展」では「唯一無二の造形」「卓越した技術」と降矢哲男研究員がお話しされておりました。建造物を除く美術工芸品の国宝は885件、そのうちの1/4が今回展示されます。では、どのようにしてその210点は選ばれたのでしょうか。
「京都国立博物館だより2017年10.11.12月号」によれば以下の4つの切り口からジャンルごとにテーマを設けて展示が構成されています。
⦁ 京都を中心に、関西・西日本地域にゆかりのある作品
⦁ 縄文土器など日本を独自の文化を示す作品
⦁ 日本文化が大きく影響を受けてきた中国などの作品
⦁ 京博研究員が担当している12ジャンル(考古、彫刻、絵画(仏画、絵巻物・肖像画、中世絵画、近世絵画、中国絵画)、書跡、染織、金工、漆工、陶磁)の専門分野の日々の研究内容や開催してきた展覧会の成果
それにしても混むのは必至の展覧会です。混雑回避策はどうされていますか?いずれの展覧会も会期末になるほどに駆け込み来館者が増えますので、私は出来るだけ早い時期に出かけたいと思っております。特に混むのがお昼を挟んだ4時間ではないでしょうか?朝一という方もいらっしゃいますが、京博では混雑状況をTwitter で知ることが出来ます。開館前から智積院辺りまで並んでいると聞いていますし、私はとてもそんなに早く京博まで出かけられません。平日3時頃をめどに出かけてはどうでしょう?2回目なのでどこに何が展示してあるかは見当がついています。自分の出かける日に絶対見逃したくない作品も事前にチェックしておくといいかもしれません。公式サイトでは「日程別作品検索」が出来ます。
確かにまだ混んでいますが、人気の所を後回しにして回ってみました。Ⅱ期は、「曜変天目」目当ての方に1階からも入れるようになっていました。正面右の階段から2階へ、「近世絵画展示室」《風俗図屏風(彦根屏風)》こちらもⅡ期しか展示されません。一度見て観たかった屏風です。「風俗図屏風」ということで、勝手に大和文華館の《松浦屛風》のイメージでしたが、意外に小さい。左四枚は遊里の室内遊楽図。画中画の屏風と呼応して「琴棋書画」に見立てた三味線、双六、恋文?描かれた器物や着物の柄にも目がいきます。右二枚は屋外です。刀に寄りかかる侍の姿がとても目を惹きます。屋外の人物像 はそのまま浮世絵に繋がりそうです。私の大のお気に入り《志野茶碗 銘卯花牆》
に足を止める人が少ないのがとっても残念。日本で焼かれた茶碗で国宝に指定されているのはたった二碗、そのうちの一碗でそれも大巨匠の屏風を背にして拝見する思い切った造形をお忘れなく!
ついでにとお隣の「中国絵画展示室」ここがとっても良かった。列にもスムーズに入り込めて最前列でじっくり拝見!! 伝徽宗筆《秋景・冬景山水図》世俗から離れた山中の高士を描いたのは皇帝です。「松籟に鶴唳、猿啼という大自然のなかでふと耳にした音を画中に閉じ込めた」と表現される「東山御物」です。冬景の猿が一匹見つけられませんでした。秋景の鶴は左手から観ると見えてきました。この横に並ぶ 伝胡直夫筆《夏景山水図》と共に本来は四幅対の四季山水図で春景は所在不明らしいです。伝来もきっちりわかっているところが凄い!李廸筆《帰牧図》大和文華館所蔵です。国宝は《帰牧図》だけで左の「牽牛幅」は描いた時代も人も違うらしく「附」(つけたり)だそうです。そういわれて観れば…
22日までの雪舟国宝揃い部屋、お名残惜しく今回もじっくり最前列で拝見。雪舟が山口の大内氏の下に落ち着いた文明18年(1486)に描いた《四季山水図巻(山水長巻)》は後半部分が展示されていました。山水を旅した最後は人の賑わいのある光景が広がり、ちょっと驚きました。毛利博物館へ是非もう一度会いに行きたい。本当に夢のような空間でした。
さて、そろそろ3階へ戻って、「書跡」を観ます。Ⅱ期はちょっとした「空海祭」状態でした。《尺牘(久隔帖 最澄筆》高雄山寺(後の神護寺)の空海の下で修業中の弟子の泰範に宛てた書状で、最澄の現存する唯一の書簡です。非常に丁寧な書き方だそうで、泰範を通じて空海の目に触れることを意識して書かれたのではと考えられています。NHKブラタモリの高野山編でタモリさんが目にして甚く感動されていた《聾瞽指帰 上巻 空海筆》空海24歳の時の著作だそうです。若々しく勢いのある筆致に空海の強い思いが伝わるようです。
お隣の考古は、縄文の造形力を感じた縄文のビーナスたちと火焔型土器。火焔型土器は、どっしりとはしていますがテングスなどで固定されていない。大丈夫なの?と博物館へ問い合わせたところ「平成知新館は、建築全体を耐震構造とし、免震装置が設置されております。「火焔型土器」「土偶」などの展示ケースは、個別に耐免震装置を備えております。また、仏像なども展示ケース、および各階展示室床面下にも免震装置を備えております。」と回答を頂きました。それで仏像たちもしっかと立っているのですね。
2階の仏画のお部屋の《吉祥天像》は、もう薬師寺へお帰りになっておりました。
1階へ降りて観たかったのは、衣文が印象的な清凉寺《釈迦如来像》です。先の西大寺展で模刻した西大寺の本尊を観ていたので、三国伝来のこのお像をしっかり拝見したかったです。光背も随分と凝ったもので、元々のものなのか、それとも後補なのでしょうか。平常展でいつもお目にかかっていた金剛寺《大日如来像》と脇侍《不動明王坐像》は、奈良博に寄託中の降三世明王と共に今年国宝に指定されたばかりです。様々ないきさつから完成に50年もかかったお像だそうです。この展覧会が終われば、金剛寺へお帰りになるそうです。
そうして5時を過ぎ混雑も空いてきたころ墨蹟と一緒に展示される大徳寺龍光院《曜変天目》を観に行きました。「曜変天目」の独立ケースの回りには一重ほどの人が観ておられ、ちょっと待てば前の人のあとに入ってじっくり拝見できました。最初は正面でなく後ろ側から、私はちょっと背が低いので照明が強く当たる見込みを背伸びして覗き込みました。観終わった方が抜ける度に少しずつずれて正面からも拝見しました。照明が強く当たっていると感じていましたが、展示室が暗かったせいで、出来るだけ自然光に近い特別の照明だったようです。「曜変天目」を展示するための特別の独立ケースを用意されたようです。かつて見た静嘉堂や藤田美の「曜変天目」の様に青くは耀いていませんでした。ぽつぽつが白く、その輪郭が光り、銀河や宇宙でなく、星座が連なっているようでした。藤田美術館では解説会で茶碗の外側に光を当てると外側にも小さなポツポツの青い光が見えましたが、龍光院の「曜変天目」の外側などはよくわからなかった次第です。龍光院の「曜変天目」は素朴という形容がなんだか頷ける他の二碗とはまた違った印象でした。龍光院の「曜変天目」で私の中でパズルが一つ埋まりました。
Ⅲ期は、曼殊院の黄不動、徳川美の源氏物語絵巻や厳島神社の平家納経、等伯、久蔵の親子共演に応挙の雪松図が華を添え、それらをバックにした「卯花牆」。孤蓬庵の大井戸茶碗も楽しみです。
何度見てもどこか見落としているような、離れがたく、いつもまでも眺めていたい展覧会です。
【参考】
・トラりんの「虎ブログ」⇒コチラから
・「秋の京都は「国宝の杜」へ。ついに始まりました『国宝展』@京都国立博物館」