アトリエONOの2階で開催された野花乃koubako展は、春の訪れを感じられる作品がずらりと並んでいた。
私たちは春の訪れをどのような時に感じているのだろう。たぶん家の庭や公園、土手などに春らしい花を見つけた時ではないだろうか。だんだんと暖かくなるのを肌で感じ、春の花を見ると「ああ、やっぱり。」と思う。
おのみちこさんの作品には、まさにそれを感じさせてくれるパンジーやすみれ、桜などの春らしい花があしらわれている。香箱を開けると、ほんのりと香木の香りが広がる。形もさまざまで、ちょうど手のひらに収まる正方形のものや、ネックレスを入れるのにぴったりな縦長のものなどがあり、使い勝手が良さそうだ。布地に和紙やビーズなどを使って、花やそれに集まる昆虫を表現している。素材の質感や色合いから、自然の持つ独特の暖かみが伝わってくる。素材の特徴を活かして細やかに表現できるのが、おのみちこさんの魅力だろう。
よく使うものや無くしてしまいそうな小さな小物を、そっと春らしい香箱にしまうのもいいだろう。日常が少しだけ楽しくなりそうだ。
1階では装飾標本室が開催されていた。レースの白い布地に、まるで標本から飛び出したような無数の蝶が止まっていて、思わず目を奪われた。標本を見る機会は中々ないが、繊細に描かれた羽の模様は本当に美しいと思う。
標本の花をモチーフにしたアクセサリーの数々も並んでいた。標本の花は本物の花のように生き生きとした印象はない。しかし鮮やかさを保ったまま閉じ込められた雰囲気が、アンティークのような独特の印象を与えている。アクセサリーは紙でできているためとても軽く、表面を加工していて光沢がある。ひとつ身に着けると華やかになり、ファッションの良いアクセントになりそうだ。