Report&Reviewレポート・レビュー

【レポ】京都市京セラ美術館リニューアル記念展(2)コレクションルーム第1期(春期)

2020/04/21

20200319_101458.jpg

ついに3年の休館期間を終え、京都市京セラ美術館がリニューアルオープン!
そのオープン記念展覧会を内覧会で一足先に拝見してきました!
みどころや、実際の展覧会の様子などを交えてご紹介します!

※京都市京セラ美術館の入館は、当面の間事前予約制(定員有)となっています。予約方法・詳細は京都市京セラ美術館のホームページをご確認ください。

■ 過去のレポートはこちら!

【レポ】《1》内覧会:京都市京セラ美術館 リニューアル!見どころスポットはここ!
【レポ】《2》内覧会:京都市京セラ美術館 リニューアル!見どころスポットはここ!

■ 工事中の様子やインタビューなどの特集はこちら!
京都MUSEUM紀行。Special【京都市美術館 リニューアル特集】



■ 前回はこちら!

【レポ】京都市京セラ美術館リニューアル記念展(1)「京都の美術250年の夢」 最初の一歩:コレクションの原点


20200319_101849.jpg

続いては中央ホール向かって右側の南回廊入口から、コレクションルームの展示へ。

コレクションルーム第1期(春期)

20200319_104232.jpg

コレクションルームは、リニューアルに伴い新たに設置された、京都市美術館のコレクションをいつ来館しても見ることができる常設展示室です。
京都市美術館のコレクションは現在までに3,700点以上。日本画を中心に、洋画や彫刻、版画、工芸、書など多彩なジャンルの作品が所蔵されています。特に京都にゆかりのある作家の作品、なかでも明治~昭和にかけての京都画壇の作家による名品が充実しており、優れたコレクションとなっています。

春期(~6月21日予定)は、春らしいもの、そしてリニューアルに合わせて新たな始まりの季節を感じさせるものをテーマに、日本画を中心に100点の作品が選ばれています。

※この展覧会は新型コロナウイルス感染症対策により会期変更(5月26日~6月21日)となりました。
※入館は事前予約制(定員有)となります。最新情報は京都市京セラ美術館のホームページをご確認ください。
※レポートの内容は3月に開催されたプレス向け内覧会時の取材内容を基にしています。一般公開時とは一部展示構成や作品の配置が異なる場合がございます。

20200319_104252.jpg

まず第一室で迎えてくれたのは、菊池芳文の大作「春の夕・霜の朝」。左隻には霜の降りる冬の朝、右隻には春の夕空の下に咲く美しい山桜が繊細な筆致で描かれています。枝に留まる鳥の姿からも春を感じる作品です。

20200319_104445.jpg

左手前は池田遙邨の「南禅寺」。伽藍図を思わせる左右対称の構図で、南禅寺の景観が描かれています。よく見るとあちこちに桜が描き込まれていて、春の風景であることがわかります。南禅寺の名所である水道橋や、参拝客たちの姿も有り、見ていてとても楽しい作品になっています。

20200319_104526.jpg

第二室は春らしい、春を感じさせる作品を中心に展示。
各部屋ごとにテーマが設定されているそうで、小さな展覧会を各部屋ごとに見ているような感じで楽しめます。
その中には今では余り知られていない作家の作品も含まれています。

20200319_104745.jpgのサムネイル画像

こちらは丹羽阿樹子「遠矢」。一般的にはあまり知られていない女性画家の作品です。
タンポポなど春らしい花が作草原で、鮮やかな黄色いワンピースにハイヒールと昭和モダンな装いの女性が、遠くの標的をめがけてキリキリと大弓を引き絞っています。

展示案内をして下さった学芸課長の山田諭さんによれば、この弓の構え方は戦場で遠くの敵を狙って上空に向けて矢を放つためのもので、まだ女性の身分がそれほど高くなかった時代における女性の心意気を感じさせる作品となっています。彼女が矢を向けているのは獲物や的ではなく、変化する時代のなかでの理不尽さや抑圧、壁となる存在なのかもしれません。

美術館では、現在は知名度が高くない作家の作品でも季節やテーマに沿った展示作品として紹介し、評価を高めていきたい、と考えているそうです。今後登場する知られざる名作に出会える機会が楽しみです!

20200319_123150.jpg

ちなみに館内併設のカフェ「ENFUSE」では、展覧会コラボメニューとしてこの「遠矢」をイメージした和菓子のセットが提供されます。今後もコレクションルームの展示作品とのコラボメニューが随時登場するそうですよ!

※2020年6月現在、カフェ及びショップの利用は展覧会を事前予約の上入館された方限定となっています。最新情報・詳細は京都市京セラ美術館のホームページをご確認ください。

20200319_104928.jpg

第三室のテーマは「祈り」。主に仏教に関するモチーフの作品が集められています。
写真右と右から2つめの作品は仏画を多く描いたことで知られる日本画家・村上華岳の作品。特に、右から2つめの「阿弥陀」は初期の代表作。華岳は東洋のモチーフや手法に西洋画の要素を取り入れた独自の絵画「国画」の確立を目指し、国画創作協会を結成して活動しましたが、この作品はそれより前に描かれた貴重な一点です。
他にも、華岳と関連のある国画関連の作家作品が併せて紹介されています。

20200319_105314.jpg

展示室の間の広間にも作品が展示されています。奥に見えるのは河井寛次郎の代表作「花文扁壺」。

20200319_105244.jpg

こちらには建畠大夢「夢」が。
見逃してしまわないように、展示室間も周囲をぜひチェックしたいところです。

20200319_105229.jpg

以前は事務室となっていた小部屋も新たに展示室になっています。 レトロな窓とのコントラストが素敵な空間。小さな工芸品などはこちらで見ることができます。

20200319_105454.jpg

次は武者絵や歴史画、故事を元にした作品が並びます。手前左は大正から昭和にかけて歴史人物画で活躍した森戸果香(もりとかこう)の「矢叫び」(1938)。柔らかい色合いながら、飛び交う矢と暴れる馬、争う武者がダイナミックに描かれた臨場感に溢れる作品です。
他にも大型の作品が多数展示され、迫力たっぷり!

20200319_105802.jpg

続いては洋画。右端は日本の洋画壇の先駆を担った画家・浅井忠の「グレーの柳」。フランス滞在時に過ごしたパリ郊外のグレーの風景を描いたもので、貴重な代表作のひとつです。同じ部屋には、浅井忠の後継者的存在となった鹿子木孟郎の作品など、日本の洋画界を切り開いた画家たちの作品が並びます。

20200319_105905.jpg

その後には、昭和初期から活躍した小牧源太郎や北脇昇など、京都ゆかりの前衛芸術・シュルレアリスムの画家による作品が並び、現代絵画への変遷をたどる流れになっています。実は京都市美術館のコレクションにはこのような前衛芸術の代表作も充実しているのですが、あまりそういうイメージは少ないかもしれません。
意外な作品に出会えるところも、コレクションルームの魅力といえます。

20200319_105935.jpg

他にも、綴織屏風や友禅染の着物などの染織作品も展示されています。(右手前は祇園祭の懸装品も手掛けた山鹿清華の「手織錦屏風 立花」)

以前もコレクション展は随時開催されていましたが、これだけのジャンルと量をまとめて見られる機会はあまりなかったので、京都市美術館のコレクションはこんなに多彩だったのか!と驚かされました。

今後コレクションルームでは、基本的に3か月毎入替・年4回のペースで、コレクションの中から季節に合わせて選ばれた作品を中心に公開されます。人気作品や代表作は、年に1度は展示公開を予定しているので出会える機会も増えそうです。今後登場する作品にも期待です!

京都市京セラ美術館についてはこち

最近の記事