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ゴッホ展(京都市美術館) & 「狩野山楽・山雪」(京都国立博物館)(2)

投稿:2013年5月 2日

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(1)ゴッホ展編より

 「狩野山楽・山雪」(京都国立博物館)

「京都の狩野派は濃い。」 このキャッチフレーズに嘘偽りなく、素晴らしいの一言に尽きる濃密な特別展覧会です。この特別展、京都国立博物館だけでの公開。他では鑑賞することができません。また、狩野山雪の名を冠した展覧会は昭和61年(1986)以来二度目だとか、稀な展覧会でもあるようです。

第1章 京狩野の祖、山楽

この章は、狩野永徳の画風を色濃く受け継いだ狩野山楽の作品群の展示です。

六曲一双《龍虎図屏風》は、渦の表現で龍の迅速な動きが表現され、オスの虎は咆哮して迎え撃っており、凄まじいまでの迫力が感じ取れます。メスの虎は豹が描かれていますが、これは当時、豹が虎のメスだと思われていたことによります。
豹が虎のメスだと思われていたこの時代、オスの虎は誰も見たことがなく想像で描かれたわけですが、そのような作品としては長谷川等伯の虎が、威風辺りを払って凄みがあります。

その他《松鷹図襖》は、永徳の《檜図》に似た構図を持つ作品で大画様式を継承した見応えのある作品となっています。
《車争図屏風》は、源氏物語の葵の上一行と六条御息所一行とが、牛車の置き場所をめぐって争いをおこした様を描いたもの。襖絵を屏風に仕立て直した際の切り詰められ方が大きいのが残念です。

書こうと思えば山の如くあるのですが、「第2章、山楽から山雪へ」、は割愛します。

第3章 山雪の造形実験 1 ー 花鳥と走獣

《四季花鳥図屏風》、いきなり清々しさが心の中に広がってきます。
対幅の《松梟竹鶏図》、梟はとぼけた感じで可愛く、鶏には威厳があります。
《猿猴図》、山雪カワイイ系作品の代表でしょうか? とっても可愛い。

対幅《龍虎図》、他の作品も同様の傾向がみられるのですが、山雪は龍を情けなく描画しています。この作品も同様で、龍は上目遣いで情けなく描かれています。他方、虎には迫力があります。この虎、水を飲んでいるのですが、「ピチャピチャ」と音が聞こえてきそうなくらいリアリティがあります。

三幅対《雨竜・雪梅・風竹図》、風竹図の笹は、風にそよいでいます。笹が描かれた作品は今まで多くの作品を見てきましたが、これほどまでに、そよぎを感じた作品は他にありません。

《兄弟図》は新発見の作品。水仙、沈丁花、梅が描かれています。一瞬、華道の三君が思い出されますが、解説によると黄庭堅の詩に由来するものだそうです。

第4章 山雪、海外からの里帰り作品と関連作

思わず微笑みたくなるような《蝦蟇・鉄拐図》、凹凸の激しいデフォルメによる旧天祥院客殿襖絵の《老梅図襖》、《平湖秋月・断橋残雪図屏風》等展示されています。
この章では《長恨歌図巻》でしょうか。上下巻併せて20mを超える作品の殆どが公開されています。裏彩色されたこの作品は色褪せてなく、特に赤の美しさに惹かれます。他の作品でもそうなのですが、山雪の赤は良い。所蔵しているのがアイルランドのチェスター・ビーティー・ライブラリだけに、次は何時里帰りするものやら。

第5章、山雪の造形実験 2 ー 山水・名所・人物

《富士三保松原図屏風》、この絵は《山楽・山雪山水貼》に下絵があります。見比べてみると面白い。清明な感じが胸に広がってきます。
このコーナーで見落として欲しくないのが泉涌寺の《雲龍図天井画》。次のコーナーへの出入口の上部に画像投影によって展示されています。

第6章、山雪と儒教・仏教

《白衣観音図》は、水平・垂直の線で鋭く表した岩、その上に座す白衣観音の白衣の白が印象に残ります。
《維摩居士図》(福井県・善通寺所蔵)は風格ある姿に描かれています。最終章(第8章)に展示されている《寒山拾得図》もそうなのですが、山雪の描く人物は、生き生きとしており大変魅力的です。

第7章、山雪の造形実験 3 ー 飾りと人の営み

《花卉流水図屏風》。大変手の込んだ作品、高かっただろうな....等と思います。
《蕭湘八景図押絵貼屏風》と表裏をなしている作品ですが、表である《蕭湘八景図押絵貼屏風》より、こちらの《花卉流水図屏風》のほうがズッと良い。取り分け、渦の表現が独特で優れています。

第8章、極みの山雪ワールド

この特別展の掉尾を飾る第8章には、山雪の最高傑作群、《楼閣山水図屏風》、《龍虎図屏風》、《寒山拾得図》、《盤谷図》、《蘭亭曲水図屏風》、そして、京都国立博物館をして「奇跡」と言わしめた《雪汀水禽図屏風》が展示されています。

《龍虎図屏風》。虎の体表面が本物です。虎の体の表面にヌメリがあります。ここまで描かれた虎には初めて出会いました。波は激しくうねり、松・岩は豪快に描かれているにも拘らず、龍は例によって上目遣い、それも寄り目で情けなく、虎は両前脚を揃えて行儀よく、口元には微笑みさえも感じられます。両方共戦闘意欲など全くない。面白い龍虎図です。

《盤谷図》。山雪水墨画の極地でしょうか? 鋭い岩峰、ウネる波濤、実にダイナミックです。《盤谷図》の定規が売っていましたので購入してきました。参考までに下に写真をアップしておきます。

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《雪汀水禽図屏風》。あまりの素晴らしさに言葉がない。それが実感です。銀泥で描かれた波は実に流動的です。 個人所蔵のようです。次は、何時見ることができるのか分からない名作を、この機会に鑑賞しておいて欲しいと思います。

「いずれにしても《雪汀水禽図屏風》は、山雪のたどりついた美の世界の極地であり、胸がしめつけられるように美しい。こんな作品が日本の絵画にあった。その奇跡を噛みしめたい。」 

京都国立博物館による最大の賛辞とともに、この特別展は終わっています。

特別展覧会 「狩野山楽・山雪」



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