太鼓
能で使われるものと基本的には同じ作りで、2枚の牛皮と欅(けやき)などをくり抜いた短胴を、調緒(しらべお)と呼ぶ麻紐で固く締め上げたもので、緒の締め方の強さや飾り結びのデザインは鉾町によってすこしずつ異なります。
演奏するときは木製の台に斜めに置き、保管するときは緒を緩めます。
(写真は長刀鉾さんの太鼓です)
2024年度の祇園祭山鉾巡行・及び関連行事(宵山等)は本来の形にて開催予定です。
※状況によりやむを得ず予定が変更となる場合がございます。詳細・最新情報については公益財団法人祇園祭山鉾連合会及び各山鉾町のホームページ等をご確認ください。
〜 京都の街中がミュージアム! 〜
コンチキチン♪祇園囃子が響き出せば京の町はお祭りムード一色に。
アゲジャー♪ソーレー♪モヒトーツ♪ヨイ ヨイ♪ 合いの手も聴きどころのひとつ!
7月に入れば 町をぶら~り夕涼み お囃子稽古"二階囃子"に耳を澄ますのも一興です。
実は30曲もの組み合わせで出来ていたり、シーンによって曲が変わったり、テンポも変わったり、鉾によっても少しずつ違いがあったり、、、
前祭で巡行の先頭を務める「長刀鉾 」、
2014年に巡行復帰を果たした、後祭の最後尾を飾る「 大船鉾 」
ふたつの鉾の祇園囃子をそーーっと覗いてみました。
※こちらの記事は取材時(2012年)の内容に基づきます
鉾の上で能や狂言を演じたことの名残とも言われ、太鼓(締め太鼓)・笛(能菅)・鉦(摺り鉦)の三つで構成されます。
現在は各鉾の町衆が囃子方を務めていますが、昔は鉾のスポンサーである旦那衆が芸能人を雇って鉾の上で演じさせてお祭りを楽しんだとか。
祇園祭は疫病退散祈願のお祭りですが、お囃子は、疫病のもととされる悪霊をおびき寄せる為の重要な役割も担っています。お囃子を賑やかに奏でることで悪霊たちを誘い、楽しい雰囲気に酔わせたままその日のうちに鉾町へ持ち帰り、蔵に封じ込めてしまいます。
一曲は1分~1分半くらいで、20~30の曲を組み合わせて演奏します。同じ曲を何回か繰り返し、巡行の進み具合を考えながら次の曲へと移るタイミングを図ります。
基本は同じですが鉾によってアレンジが加わり伝承されてきました。隣接した鉾町の曲は似ていたり、他の鉾町の人に教えてもらったりすると似てきたり、曲ひとつでも歴史をたどることが出来るかもしれませんね。
能で使われるものと基本的には同じ作りで、2枚の牛皮と欅(けやき)などをくり抜いた短胴を、調緒(しらべお)と呼ぶ麻紐で固く締め上げたもので、緒の締め方の強さや飾り結びのデザインは鉾町によってすこしずつ異なります。
演奏するときは木製の台に斜めに置き、保管するときは緒を緩めます。
(写真は長刀鉾さんの太鼓です)
「能菅」という能に使われる竹の横笛です。
竹を縦に割って裏返して硬い部分を内面に向けてつなぎ合わせ成形し
、管の内側には厚く漆を塗ります。外側に桜の皮を巻いたものが多く、持ってみると見た目よりもズシリと重く感じます。 自然の素材を用いていることや、もとは独奏のために作られているため少ーしずつ音は異なるそうです。
(写真は長刀鉾さんの笛です)
コンチキチン♪祇園囃子の一番大きな特徴を作っている楽器です。 銅を含んだ合金製で金属の含有率や厚み、径などが鉾によって異なるため少しづつ音色も違ってきます。 バチは「鉦スリ」と呼ばれ柄にはよくしなる鯨のヒゲを、先には鹿の角が使われています。 (写真は長刀鉾さんの鉦です)
7月に入ると、それぞれの「会所」で、お囃子の稽古が始まります。
会所の二階で稽古をすることから「二階囃子」と呼ばれています。
※長刀鉾さんの会所
所在地:京都市下京区四条通烏丸東入長刀鉾町(大丸京都店の西です。)
2012年7月4日午後7時、稽古が既に始まっています。 稽古を始める前には必ず、長刀鉾の御神体である素盞鳴尊の祭壇に拝礼します。壁には歴代のお稚児さんの写真が飾られ、奥にある蔵には鉾が保管されています。
太鼓方の中でも、曲順を決めたりテンポを作ったりする人を「シン」と呼び、囃子方全体のリーダーも務め、太鼓・笛・鉦の全てのパートをマスターしている方もいます。
鉾の一番前に配置されるのが一般的ですが、長刀鉾ではお稚児さんが先頭に座られるため、巡行時は鉾の後ろの方での演奏となります。
ドレミ音階ではなく1、2、と数字で表記されますが、覚え方は昔と変わらず耳コピー。指の動かし方は先輩の後ろについて一生懸命盗みます。
長刀鉾さんでは笛方が一番人気!欄縁に腰掛け、旋律をリードしていく快感は憧れの的です。
7/13~7/16の期間中に会所前で行われるお囃子では、ゆったりとした笛のソロパートなど、巡行時には演奏されない曲も聞けるチャンスです!!
囃子方になるには、先ず鉦のマスターから。10歳頃より始め笛方や太鼓方へと成長していきます。
「チャン」「チ」と言った”口唱歌”や「▲」や「○」と書かれた楽譜で伝承され、周りの音をよく聴きながら鉦を叩かなければいけないので、自然と笛や太鼓の音色も覚えていくそうです。
先輩方の指導のもと 将来が楽しみな子どもたち。 お稚児さんを務めた後、囃子方になることも多いそうです。
稽古時は曲目が墨書きされた木札を、順番を決めて畳の上に並べますが、巡行時は太鼓方の「シン」が大きな声でみんなに曲の変わることを伝えます。前の方で聞こえない演奏者にはずらっと並んだ笛方が伝言していったり、手振りで伝えたりと、鉾によって工夫しているそうです。
現在、長刀鉾で演奏されている曲は33曲あり、楽譜は残っているが完全な復刻は出来ていないもの等を含めると50曲近くになるそうです。
楽譜は基本的に鉦の為の譜ですので、太鼓や笛をそれに合わせていきます。
復刻するためにも新たに笛や太鼓の音を作っていかなければならないので、そこで新たな歴史が生まれることになりますね。
楽譜は鉦の為の譜面となっています。
合いの手が言葉で表記されていることがとても興味深い譜面です。
▲は鉦の真ん中、○は鉦の縁(上、下、)、、、
これらの組み合わせで演奏していきますがテンポは太鼓方が作っていきます。
速い曲(戻り囃子)よりもゆったりした曲(奉納囃子)の方が間の取り方など難しいそうです。
ヨイ ヨイ ♪ 楽譜を見ているだけでわくわくしますね!
巡行時の鉾の上では悠長に楽譜を見れませんので、みなさん頭に入ってるそうです!
巡行時、右側に鉦方9名、左側に笛方9名、そして奥に太鼓方2名の計20名での演奏となります。
長刀鉾では現在89人(太鼓方14名、笛方28名、鉦方47名)の囃子方が在籍している為、四条河原町で鉾が一度止まったとき、鉾の真ん中にある板を外しはしごを使っての囃子方交代があります。
お稚児さん、お稚児さんの関係者、そして囃子方を含めると鉾の上は60人近くに!熱気で覆われています!
巡行時には、演奏者も祭りの気運が高まって、鉾の上で一体となって楽しんでいる感じだそうです。それも厳しい稽古の上になせる技!
聴きどころ!辻廻の手前で少しずつテンポが上がり「エンヤラヤー」を合図にぐーーーっと一気に速くなり、曳き手も囃子方も観客も気持ちを高ぶらせていきます。曲がりきったらどーーんとゆっくりになり、「チキチン チキチン」と鉦が安定したリズムを刻み、また進み始めます。
2012年7月3日午後6時 完全復興に向けて、「ごはん処 矢尾定」さんの二階での稽古です。
この日は記念すべき「吉符入り」を終えられた後でした。
(吉符入りとは・・各鉾町で行われる神事で、関係者一同紋付袴で参列し神官のお祓いを受けて一ヶ月間に渡る 祇園祭の進行の無事を祈願する神事です。)
※二階囃子の行われる場所:京都市下京区新町通綾小路上ル条町361 ごはん処 矢尾定2階
完全復興へ向けて、こちらを仮の会所とされてます。
お囃子の稽古中、一階では通常通り営業されているので、祇園囃子を聞きながらお食事を楽しめますね。
(二階へは関係者以外は上がれませんのでご注意ください)
紐を緩めた状態で保管するため、太鼓方は少し早めに到着し、ぎゅっと紐を締めていきます。しっかり張るには、なかなか力が必要で温湿度によっても微妙な加減が必要とされます。鉾によっては、ゆるくしめて低音を出すところもあるそうです。
よく見ると色んな柄の浴衣がありますね。
復興してから15年、3着目の浴衣だそうです。
鉾町によっては毎年浴衣を新調するところも!
1997年の復活より10年間くらいは、囃子方の一般公募をしていました。
小さい頃からやりたかったけれど、町内に鉾がなかったために今までできなかった人など、延べ100人くらいが出入りして、現在30名くらいで形成されています。
鉦の制作者は伏見区在住の鋳造師 南條一雄氏。
展示室に飾られた古い江戸時代の大船鉾の鉦が先祖の作品であることを知り「復興させなくては!」と制作と寄付を申し出て下さったそうです。
鉦は大変高価なものでもある為、「鉦があるし、囃子を復活させよか」と、鉾よりも先がけて囃子方の復活へ向けての練習が始まりました。結果的にこの鉦が、再来年予定されている完全復興への火付け役になったと言っても過言ではありません。
次の曲目をみんなに伝えます。この伝達方法も鉾によって様々です。
大船鉾に伝わる楽譜は焼失しているため、曲目は祇園囃子の基本を押さえながら新たに作成したものがほとんどです。岩戸山さんが囃子方の復活をお手伝いして下さっていることもあり、少し曲が似ていたりします。
大船鉾は2011年よりヨドバシ京都ビル1Fの特設スペ―スにて復興途中の鉾を一般向けに展示公開。2012年7月1日には囃子方による初の公開練習を開催。本番の巡行を想定して冷房を停めた暑い中での演奏は、囃子方たちとそれを支援するファンたちの完全復興への決起集会ともなりました。
大船鉾は2014年に鉾が完成、山鉾巡行に本格復帰しました。
昔と変わらず、後祭の殿(しんがり)、巡行を締めくくる鉾としてお囃子とともに街を練り歩きます。
※ヨドバシ京都ビルでの展示公開は終了しています。