京遊×橋本関雪記念館 白沙村荘の庭から 第八回
京都には大小さまざまなミュージアムがありますが、その中には現在も人が暮らしている家の一部をそのまま公開しているようなところもあります。そんなミュージアムのひとつが、日本画家・橋本関雪の建てた邸宅である白沙村荘 橋本関雪記念館。その副館長で関雪の曾孫である橋本眞次様に、普段はちょっと分からない、美術館での日々を徒然と綴っていただくコラムです。
白沙村荘上棟式 1916(大正5)年
白沙村荘もあと数年で1世紀を経ることとなります。改めて「よくもまぁ遺ったものだ」と感心するのですが、遺ってしまったものは仕方が無いのでまたこれからの100年を耐えるよう、2010年度から庭園と建物の改修事業がスタートしました。現在解体撤去されている茶室を含め、大画室、主家、持仏堂、門に至るまで徹底的に診断をして、庭園部とあわせて補強や修復を行うのです。一応期間は5年ということで、2016年の造営100周年にちょうど間に合う形ですべての事業が完了する予定です。
二月の頃(村上華岳作/京都市立芸術大学蔵)
1911(明治44)年当時の銀閣寺前の様子を俯瞰気味で描いた村上華岳の卒業制作。ちょうど画面中央あたりが現在の白沙村荘のある場所にあたります。
この100周年の界隈には結構関雪関連の節目が集まっていまして、2012年は関雪夫人よねの没後80年。2013年が関雪生誕130年、とんで2015年が関雪没後70年。そしてその翌年が白沙村荘造営100周年・・となんだか盛り沢山です。当然そのあたりに「橋本関雪展」の計画もすでに持ち上がっています。時効ですから言ってしまうと、前回の展覧会が消化不良だっただけに今からすごく楽しみです。
まぁ楽しんでばかりも居られず、何かをしようとするのなら当然のように人・物・金が付いて回るわけでして、毎日あれこれ考えながらどうするかどうしようかと悩んでいます。完璧を期せば期すほどに、迷路のような思考に嵌ってしまいますからあまり考えずに、でもよく吟味して行うことが肝要なのではないかと感じています。何よりも関わる自分自身が不勉強であれば失敗をしたり、時には騙されてしまったりということも十分にありますから、十分に用心をしながら計画を組み上げていく必要があります。
茶室 倚翠亭と憩寂庵
現在は2009年の火災により見学不可。再建・復旧の準備を行っています。
まずは来年度に予定されている茶室の再建からスタートします。白沙村荘の大部分を100周年を気持ちよく迎えるために、お色直しするという事になります。この一連の事業が成功となるか否かは関係者の頑張り次第。上手く行くことを祈ります。
著者プロフィール
橋本眞次(はしもと・しんじ)
1973年、京都生まれ。
大正・昭和にかけて活躍した日本画家、橋本関雪の曾孫にあたる。
23歳の頃、関雪に興味を持ち父の仕事を手伝いながら資料編纂などに携わる。
現在は白沙村荘 橋本関雪記念館の副館長として活動中。
公式ブログ「京都の庭ブログ」はこちら↓
http://hakusasonso.kyo2.jp/